独立して最初につまずいたのが請求書でした。

会社員時代は経理がやってくれていたので、自分で作ったことがない。テンプレートを拾ってはみたものの、これで合っているのか分からない。そこにインボイス制度が始まり、源泉徴収も絡んできます。

この記事では、制作会社17年→独立し5年目のデザイナーである私が、実際に毎月出している請求書の中身をもとに書き方をまとめます。インボイス登録済み・源泉徴収あり、という一番ややこしい条件での実例です。

登録していない人向けの書き方にも触れます。

※制度の条件は変わることがあります。最新の情報は国税庁で確認し、迷う場合は税理士に相談してください。

請求書に必ず書く項目

インボイス以前の、請求書として最低限そろえる項目です。法律で細かく決まっているわけではありませんが、実務上これがないと処理してもらえません。

  • タイトル(請求書)
  • 請求先の名称(会社名・担当部署まで)
  • 発行日
  • 請求番号(なくても成立しますが、あると問い合わせがラク)
  • 自分の氏名・屋号・住所・連絡先
  • 取引内容
  • 金額(小計・消費税・合計)
  • 支払期限
  • 振込先(銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義)

支払期限は勝手に決めず、取引先の締め日と支払サイトに合わせるのが基本です。契約時に確認しておくと後がスムーズです。

インボイス(適格請求書)で増えた記載事項

2023年10月のインボイス制度開始で、記載事項が増えました。適格請求書として認められるには次の6項目が必要です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称+登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象ならその旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額+適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名または名称

実質的に増えたのは登録番号税率ごとの消費税額の2つ。これまでのテンプレートにこの2項目を足せば対応できます。

登録番号はどこに書くか

登録番号は「T+13桁」。個人事業主の場合、国税庁から新しく付与されます。

書く場所に決まりはありませんが、自分の氏名・屋号のすぐ下が分かりやすいと思います。相手の経理が真っ先に探す項目なので、探させない位置に置きます。

税率ごとに分けて書く

デザインやWeb制作なら基本的に10%だけなので、「10%対象:〇〇円、消費税:〇〇円」と書けば要件を満たします。

注意したいのは端数処理です。税率ごとの消費税額の端数処理は、1つの請求書につき税率ごとに1回だけ。明細の行ごとに計算して端数処理を繰り返す書き方はできません。

手作業のテンプレートだと、意外とミスが起きるポイントです。

私がインボイス登録した理由と、登録しない選択

私は制度開始の2023年10月から登録しています。理由は、取引先の都合を考えたからです。

私の取引先はほとんどが法人です。相手が課税事業者の場合、こちらが適格請求書を出せないと相手は仕入税額控除が受けられません。つまり相手の負担が増えます

「登録しないと仕事が減るかも」という不安がなかったと言えば嘘になります。でも決め手は、取引先に余計な手間をかけたくなかったという感覚のほうでした。

正直に書くと、登録後に手取りや仕事量が目に見えて変わったことはありません。消費税は、インボイスをきっかけに課税事業者になった人向けの負担軽減措置(2割特例)を使っています。ただしこの特例は個人事業主の場合、2026年分が最後です。その後どうするかは私もこれから判断するところです。

登録しない人はどう書くか

取引先が一般消費者中心だったり、免税事業者同士の取引が多い場合は、登録しないほうが合理的なこともあります。

その場合の注意点は3つ。

  • 登録番号は書けません
  • 「適格請求書」と名乗ることはできません
  • 消費税を請求すること自体は禁止されていませんが、相手が仕入税額控除できないことは伝わるようにしておくほうが親切です

トラブルになりやすいのは、相手がこちらを登録事業者だと思い込んでいるケースです。取引の最初に「うちは登録していません」と伝えておくと、請求段階での行き違いを避けられます。

消費税の書き方で、手元に残るタイミングが変わる

源泉徴収がある取引では、報酬額と消費税額を分けて書いているかで源泉徴収の対象額が変わります。

原則は消費税を含んだ金額に税率をかけますが、分けて記載していれば消費税を除いた報酬額だけを対象にしてよいことになっています。

前払いなので最終的な損得は変わりません。でも手元に残るキャッシュのタイミングは変わります。やることは小計・消費税・合計を別の行にするだけです。

源泉徴収がある場合の書き方

デザインの報酬は源泉徴収の対象です。私の場合、法人クライアントからの報酬はWeb制作も含めてすべて引かれています

請求書にはこう書いています。

項目金額
デザイン費100,000円
消費税(10%)10,000円
小計110,000円
源泉徴収税額△10,210円
お支払金額99,790円

大事なのは、源泉徴収税額を自分で計算して、振込金額まで書くこと。空欄にして相手に計算してもらうと、金額の食い違いが起きやすくなります。

なお個人事業主のクライアントからは源泉徴収されません。相手が源泉徴収義務者でない場合があるためです。その場合はこの行を入れずに請求します。

仕組みや計算方法は個人事業主の源泉徴収とは?にまとめています。

デザイナーですが、請求書は自作していません

使っているのはマネーフォワードの請求書機能。テンプレートも用意されている「シンプル」をそのまま使っています。

一度、作ろうとしたことはあります。「自分の仕事の顔になる書類だし」と思って、Illustratorで少しいじってみました。

結果、やめました。理由は3つあります。

①作ってみたけど、大して変わらなかった

書体を替えて、罫線を整えて、余白を調整して。やってみたものの、元のテンプレートより劇的に良くなることはありませんでした

請求書は載せる情報も並び順もほぼ決まっている書類です。デザインで動かせる幅がそもそも狭い

そして請求書で本当に大事なのは、相手に情報が伝わりやすいことです。どこに何が書いてあるか、金額と振込先と支払期限がすぐ読み取れるか。それだけ。

おしゃれな罫線も、こだわった書体も、そこには効きません。いい感じに見せるために文字を小さくするのは論外です。読みにくくなった時点で、請求書としては失敗しています。

②毎月のオペレーションで勝てない

請求書は毎月、取引先の数だけ発行します。自作ファイルだと、コピーして日付を変えて金額を打ち替えて、消費税と源泉徴収を計算し直して、PDFに書き出して……を毎回繰り返すことになります。

ツールなら前月分を複製して金額を直すだけ。この差が毎月、何年も積み重なります

しかも自作だと制度が変わるたびに自分で直す必要があります。インボイスで登録番号と税率ごとの消費税額が必要になったときも、端数処理のルールも同じです。

③会計ソフトとつながっている

これが決定打でした。請求書を発行すると、そのまま帳簿に反映されます。入力する場所が減るほど間違いも減る。源泉徴収の記録も、後から集計する手間がありません。

見た目も「シンプル」テンプレートで十分でした。読みやすさという一番大事な条件を、すでに満たしているからです。

まとめ

  • 請求書は自分のためではなく、相手の経理が処理するための書類
  • インボイス対応で実質増えたのは登録番号税率ごとの消費税額の2つ
  • 端数処理は1請求書につき税率ごとに1回まで
  • 私は取引先の都合を考えて2023年10月に登録した。手取りや仕事量に目立った変化はなかった
  • 報酬額と消費税を分けて書くと源泉徴収の対象額が変わり、手元のキャッシュが変わる
  • 源泉徴収税額は自分で計算して振込金額まで書く
  • デザイナーとして自作を試した上で、会計ソフトの機能に任せる結論になった

独立したての私に一言だけ伝えるなら、「請求書で消耗しなくていい」。形式に悩む時間は、そのまま仕事の時間を削っています。

早い段階で仕組みに任せるのが、結局は一番の近道でした。

制度の条件は変わります。最新情報は国税庁で確認し、迷う場合は税理士に相談してください。

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