「小規模企業共済って節税になるらしいけど、デメリットはないの?」 「元本割れするって聞いたけど、実際どうなの?」

個人事業主の節税を調べると、必ずおすすめされるのが小規模企業共済です。掛金が全額所得控除になる「個人事業主の退職金制度」——たしかに魅力的なのですが、私はこの制度、気になるデメリットがあって3年ほど加入を見送っていました

そして今年、いろいろ考えた末に加入しました。

この記事では、制作会社17年→独立し4年目の私が、加入をためらった理由(=デメリット)と、それでも入ると決めた判断を、実体験ベースでお話しします。制度のいいところだけでなく、引っかかったところも正直に書きます。

※制度の細かい条件や数値は変わることがあります。この記事は一般的な仕組みと私の実例の紹介なので、最新の情報は中小機構の公式サイトで確認し、判断に迷う場合は税理士に相談してください。

先に全体像:デメリットは「本物」。ただし種類がある

最初に私の整理をお伝えします。小規模企業共済のデメリットは、大きく2種類に分かれます。

  • 知っていれば避けられるもの:短期解約の掛け捨て、減額の落とし穴など。仕組みを理解して運用すれば回避できます
  • 制度の性質として受け入れるもの:長期間の資金ロック、受取時の課税など。避けられないので、「自分に合うか」で判断するしかありません

私が3年迷ったのは、後者の「受け入れるしかない部分」が自分に合うか確信が持てなかったからです。では、具体的に見ていきましょう。

小規模企業共済の主なデメリット5つ

①12ヶ月未満の任意解約は「掛け捨て」になる

自己都合の解約(任意解約)の場合、掛金の納付が12ヶ月未満だと解約手当金が受け取れず、払った掛金がまるまる掛け捨てになります。

とはいえ、これは「入ってすぐ自己都合でやめる」場合の話。掛金は月1,000円から設定できるので、無理のない金額で始めれば、現実的にはほぼ避けられるデメリットです。

②20年未満の任意解約は「元本割れ」する

こちらが本丸です。任意解約の場合、掛金の納付月数が240ヶ月(20年)未満だと、受け取れる解約手当金が払った掛金の合計を下回ります。つまり元本割れです。

ただし大事な補足があって、これはあくまで「自己都合でやめた場合」。廃業などの正当な事由による受け取り(共済金A・B)であれば、もっと短い期間でも元本割れしない設計になっています。「20年縛り」に見えて、実際には「自己都合解約に対するペナルティ」と理解するのが正確です。(細かい条件は中小機構の公式サイトで確認してください)

③掛金を「減額」すると、減額分が放置される

意外と知られていない落とし穴がこれです。掛金は途中で減額できるのですが、減額した分の掛金は、その後運用されずに放置されます。減額後も加入年数は進むのに、減らした分は増えない。結果として、長く続けても元本割れのリスクが上がります。

「事業が苦しくなったら減額すればいいや」と気軽に考えていると、ここで想定外の損をすることがあります。最初の掛金は、背伸びせず「ずっと続けられる額」に設定するのが鉄則です。私も加入時、この点だけはかなり慎重に金額を決めました。

④受け取るときに課税される

掛金は全額所得控除になりますが、受け取る共済金は課税対象です。「節税」というより「税の繰り延べ(先送り)」の側面がある、ということです。

ただしこれも補足すると、受け取り方によって「退職所得」や「公的年金等の雑所得」として扱われ、通常の所得よりずっと優遇された計算になります。払うとき満額控除→受け取るとき優遇税制、なのでトータルでは十分メリットが残る設計です。とはいえ「受け取るときは無税」ではない点は、誤解しやすいので押さえておきましょう。

⑤国民健康保険料は安くならない

これは個人事業主にとって、地味に大事なポイントです。小規模企業共済の掛金は「所得控除」なので、所得税・住民税は安くなりますが、国民健康保険料の計算には効きません(国保料は所得控除前の所得をもとに計算されるため)。

「共済に入れば国保も安くなる」と期待していると、ここで肩透かしを食います。ちなみに、私が先に加入していた経営セーフティ共済は掛金が「経費」になるので、所得そのものが下がり、国保料にも効きます。同じ「共済」でも、この違いは大きい。後ほど詳しく比較します。

【実体験】私が3年見送った理由:資金ロックが怖かった

ここからは私の話です。

小規模企業共済の存在は、独立した当初から知っていました。「個人事業主なら入っておけ」と言われる定番制度ですし、掛金全額控除の魅力も理解していました。それでも入らなかった理由はシンプルで、手元資金の流動性を失うのが怖かったからです。

フリーランスの収入には波があります。いい年もあれば、ヒヤッとする月もある。そんな中で、「20年続けないと元本割れする積立」にお金を入れるのは、手元の自由なお金を毎月削っていくことと同じに感じていました。デメリット②の元本割れルールが、独立したての自分には重すぎたんです。

だから最初の数年は、いつでも引き出せる現金と、同じくいつでも売却できるNISAを優先しました。この判断は、今でも間違っていなかったと思っています。

それでも今年加入した理由:所得が上がり、控除の重みが変わった

では、なぜ今年になって加入したのか。理由は大きく3つです。

①所得が上がって、控除のインパクトが無視できなくなった

独立4年目に入り、ありがたいことに所得が安定してきました。所得が上がるほど税率も上がるので、「全額所得控除」の節税効果はどんどん大きくなります。見送り続けるコストが、年々重くなっていたわけです。

②流動性は、すでにNISAと現金で確保できていた

数年かけて、いざというときに動かせるお金(現金+NISA)の土台ができました。「自由に動かせるお金」と「ロックされるお金」のバランスで考えたとき、もう一部をロックしても大丈夫だと判断できたんです。逆に言えば、この土台がないうちは無理に入らなくてよかった、というのが私の実感です。

③「個人事業主の退職金」は、結局これしかない

退職金のない個人事業主にとって、掛金全額控除+受取時の退職所得扱いという税制は、やはり他に代えがありません。増やす役割はNISA、退職金と控除は小規模企業共済——そう役割分担が整理できたことが、最後のひと押しでした。

セーフティ共済との違い:私は「両方」使っています

名前が似ていて混同されやすいのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。私は両方加入していますが、性格はまったく別物です。

小規模企業共済セーフティ共済
掛金の扱い所得控除経費
国保料への効果効かない効く(所得自体が下がる)
主な目的退職金づくり取引先倒産への備え(+節税)
資金の戻り原則、退職・廃業時(長期前提)40ヶ月以上でほぼ全額戻せる

ざっくり言うと、長期の退職金づくりなら小規模企業共済、比較的短いスパンの節税・保険料対策ならセーフティ共済。私は「退職金=小規模企業共済、機動的な節税枠=セーフティ共済、増やす=NISA」の3本立てに落ち着きました。セーフティ共済の実体験は別記事に詳しく書いています。(→個人事業主のセーフティ共済は保険料対策になる

よくある疑問:掛金は経費になる?仕訳はどうする?

最後に、個人事業主が実務でつまずきやすいポイントを2つ。

掛金は経費にならない。さきほど書いたとおり、小規模企業共済の掛金は「経費」ではなく「所得控除」です。帳簿の上では事業の経費として処理せず、確定申告のときに所得控除(小規模企業共済等掛金控除)として申告します。

仕訳は「事業主貸」。事業用の口座から掛金を払っている場合、帳簿上はプライベートの支出と同じ扱い(事業主貸)で処理します。会計ソフトを使っていれば、引き落としの明細に「事業主貸」を当てるだけなので簡単です。(→個人事業主の青色申告は会計ソフトが必須!

このあたり、「経費になる」と誤解して帳簿を付けてしまうケースがあるようなので、注意してください。

まとめ:デメリットを知った上で、「入る時期」を自分で決める

小規模企業共済のデメリットと、私の判断をまとめます。

  • 短期解約の掛け捨て・減額の放置は、仕組みを知っていれば避けられる
  • 20年ロック・受取時課税・国保に効かないは制度の性質。受け入れられるかで判断
  • 私は手元資金の流動性を優先して3年見送り、所得が上がりNISAで土台ができた今年、加入を決めた
  • 「入るべきか」より、「自分はいつ入るべきか」で考えるのがおすすめ
  • 役割分担は「退職金=小規模企業共済、機動的な節税=セーフティ共済、増やす=NISA」

加入を判断する土台になるのは、結局「自分の所得がいくらで、毎月いくらなら無理なく続けられるか」の把握です。私は会計ソフト(マネーフォワード)で所得をリアルタイムに把握できていたことが、今年の決断の材料になりました。

そして繰り返しになりますが、制度の条件は変わることがあります。加入前に中小機構の公式サイトで最新情報を確認し、迷ったら税理士に相談してください。

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