「iDeCoと小規模企業共済って、両方入れるの?」 「入れるとしたら、上限はどうなるんだろう」

個人事業主の節税を調べていくと、この2つは必ずセットで出てきます。どちらも掛金が所得控除になる制度で、「両方やれば最強」という言い方もよく見かけます。

先に立場を明かしておくと、私は小規模企業共済には加入していますが、iDeCoはやっていません。併用していない人間が書いている記事です。

それでも書こうと思ったのは、調べていくうちに「併用できるか」よりも「自分はどちらから手をつけるべきか」のほうが大事な問いだったと気づいたからです。制作会社17年から独立し4年目、私が悩んだ末に片方だけを選んだ理由も、正直にお話しします。

※制度の条件や金額は変わることがあります。この記事は一般的な仕組みと私個人の判断の紹介です。最新の情報は必ず公式サイト(国民年金基金連合会・中小機構)で確認し、迷う場合は税理士に相談してください。

先に結論:併用はできます。ただし「するべきか」は別の話

答えから書きます。

  • iDeCoと小規模企業共済は併用できます
  • 掛金の上限はそれぞれ別枠。合わせると年165万円を超える額が所得控除の対象になります
  • ただし受け取るときのルールが複雑になるので、入口の節税額だけで決めるのは危険です

節税額のインパクトは、たしかに大きい。ここは事実です。

そのうえで私は、あえて片方だけにしました。理由は「お金が足りなかったから」ではなく、フリーランスという働き方との相性でした。そこは後半でお話しします。

まずは、この2つが何なのかを整理しておきましょう。

iDeCoと小規模企業共済、何が違うのか

名前も目的も似ているので混同されがちですが、性格はかなり違います。

掛金はどちらも「所得控除」。ただし枠は別々

まず共通点から。iDeCoも小規模企業共済も、掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」という同じ名前の所得控除になります。名前に「小規模企業共済」と入っているのでややこしいのですが、iDeCoの掛金もここに含まれます。

ここで多くの人がつまずくのが、「同じ控除に入るなら、上限も共通なのでは?」という点です。

違います。上限はそれぞれ別に設定されています。 だから併用すると、控除できる額は単純に足し算になります。これが「両方やれば最強」と言われる理由です。

引き出せるタイミングが決定的に違う

そして、私にとって一番大きかったのがこの違いです。

iDeCoは、原則60歳になるまで引き出せません。 途中でお金が必要になっても、基本的に手をつけられない制度です。

一方、小規模企業共済は廃業したときに受け取れます。それに加えて、任意解約という手段も残されています(20年未満だと元本割れするので気軽には使えませんが、「制度上まったく取り出せない」わけではない)。さらに、掛金の範囲内で貸付制度も用意されています。

同じ「長期でお金をロックする制度」に見えて、非常時の逃げ道があるかどうかが違う。ここが判断の分かれ目になりました。

iDeCo小規模企業共済
掛金の扱い所得控除所得控除
受け取れるタイミング原則60歳以降廃業時など(任意解約も可)
途中の資金化原則できない貸付制度あり
運用自分で商品を選ぶ制度側におまかせ
元本割れ運用次第であり得る20年未満の任意解約であり得る

もうひとつ、地味に効く違いが「運用」です。iDeCoは自分で投資信託などを選んで運用しますが、小規模企業共済は自分で商品を選びません。手間をかけたいか、おまかせにしたいかという好みも、実は判断材料になります。

併用したときの上限はどうなる?

具体的な数字を見ていきましょう。個人事業主(国民年金の第1号被保険者)のケースです。

掛金の上限(月額)年額
小規模企業共済7万円84万円
iDeCo(第1号被保険者)6.8万円81.6万円
合計13.8万円165.6万円

年間165万円超が、まるごと所得控除。所得税率が高い人ほど効きます。数字だけ見れば、たしかに強力です。

ただし、注意点が2つあります。

①iDeCoの枠は国民年金基金などと共有です

iDeCoの6.8万円という枠は、iDeCo専用ではありません。国民年金基金や国民年金の付加保険料を払っている場合、それらと合算して6.8万円までになります。すでに国民年金基金に入っている人は、iDeCoに回せる額がその分減ります。

②2026年12月に、この上限が変わる予定です

2026年12月1日施行予定の制度改正で、第1号被保険者のiDeCo拠出限度額は月7.5万円に引き上げられる予定です(実際の適用は2027年1月の引落分から)。あわせて加入可能年齢の上限も、65歳未満から70歳未満へ広がる予定です。

改正後は、単純計算で小規模企業共済と合わせて月14.5万円・年174万円が控除対象になります。併用を検討している人にとっては追い風と言っていいでしょう。

ただし、施行前の情報にもとづく内容です。実際に手続きするときは、必ず公式サイトで最新の条件を確認してください。

【実体験】私が小規模企業共済だけを選んだ理由

ここからは私の話です。

数字だけ見れば、併用したほうが控除は大きい。それは分かっていました。それでも私は、小規模企業共済だけにしました。

60歳まで引き出せない、が怖かった

理由は、ほとんどこの一点です。

iDeCoは原則60歳まで引き出せません。 制度としては当然の設計なのですが、フリーランスの自分に当てはめたとき、この条件がどうしても飲み込めませんでした。

会社員なら、毎月ほぼ同じ額が入ってきます。でも私の場合、いい年もあれば、ヒヤッとする月もある。案件が飛ぶことも、入金が遅れることもある。3人の子どもがいて、まとまった出費が読みきれない時期もあります。

そういう前提で「20年以上先まで絶対に触れないお金」を毎月積み上げていくのは、私には重すぎたんです。

節税額は魅力的でした。でも、手元の自由が減ることの不安のほうが、私にとっては大きかった。これは損得というより、性格や働き方との相性の問題だと思っています。

収入に波がある前提で考えた

もうひとつ、判断の軸になったのが「順番」でした。

私はもともと、小規模企業共済すら3年間見送っていました。理由は同じで、手元資金の流動性を失うのが怖かったからです。

先に優先したのは、いつでも引き出せる現金と、いつでも売却できるNISAでした。数年かけてその土台ができ、所得も安定してきた今年になって、ようやく小規模企業共済に加入しています。

つまり私の場合、ロックされるお金を増やすのは、自由に動かせるお金が十分に育ってからという順番でした。その順番でいくと、iDeCoはまだ先の話になります。

「やらない」と決めたというより、「今はまだ順番が来ていない」という感覚が近いかもしれません。所得がもっと安定して、手元の余裕がさらに厚くなれば、そのときは改めて検討すると思います。

併用するなら要注意:受け取り方で手取りが変わる

ここは、併用を考えている人にこそ知っておいてほしい部分です。

iDeCoも小規模企業共済も、一時金で受け取ると原則「退職所得」として扱われます。退職所得は税制上かなり優遇されているのですが、退職所得控除には「過去に受け取った他の退職金と通算される」というルールがあります。

そして厄介なことに、遡って見られる期間が制度ごとに違い、受け取る順番でも変わります

  • 小規模企業共済や会社の退職金 … 原則として前年以前4年以内
  • iDeCoの一時金 … より長い期間が設定されている

さらに2026年1月以降、確定拠出年金がからむ場合の取り扱いが改正されています。「間を数年空ければ大丈夫」という以前の感覚のままだと、想定より控除枠が小さくなる可能性があるということです。

つまり併用した場合、こういうことが起こり得ます。

入口では毎年しっかり控除を受けられた。でも出口で受け取り方を間違えて、想定していなかった税金がかかった。

これは脅しではなく、制度の設計上そうなっているという話です。併用は「入口の節税額」だけで判断せず、出口の受け取り方までセットで考える必要がある。私が併用に慎重になった理由のひとつでもあります。

具体的な計算は、加入期間・受け取る年齢・順番・過去の退職金の有無などで大きく変わります。ここは自己判断せず、受け取りが近づいたら必ず税理士に相談してください。

NISAも含めた、私の役割分担

最終的に、私は制度の役割をこう整理しています。

この3本立てで、今のところ過不足を感じていません。iDeCoが担う役割が、他の制度とかなり重なるというのも、優先度が上がらなかった理由でした。

もちろんこれは「私の場合」です。会社員の配偶者がいて収入が安定している人、老後資金を確実に確保したい人、運用を自分でやりたい人にとっては、iDeCoの優先度はもっと高くなるはずです。

まとめ:併用ありきではなく「自分の順番」で考える

  • iDeCoと小規模企業共済は併用できる。上限は別枠で、合わせて年165万円超が所得控除の対象
  • 2026年12月の改正で、iDeCo側の上限はさらに広がる予定
  • ただし引き出せるタイミングがまったく違う。iDeCoは原則60歳まで動かせない
  • 出口(受け取り方)のルールが複雑。入口の節税額だけで決めない
  • 私は流動性を優先し、現金 → NISA → 小規模企業共済の順で積み上げ、iDeCoは今のところ見送っている

「併用すべきか」と検索している時点で、たぶん答えは半分出ています。気になっているのは節税額ではなく、そのお金を長期間ロックして大丈夫かどうかではないでしょうか。

だとしたら、まず確認すべきは制度の比較ではなく、自分の所得と、毎月いくらなら無理なく続けられるかです。私も、会計ソフト(マネーフォワード)で所得をリアルタイムに把握できていたことが、共済に踏み切る判断材料になりました。数字が見えていないと、この手の判断はどうしても後回しになります。

繰り返しになりますが、制度の条件は変わります。加入前に公式サイトで最新情報を確認し、迷ったら税理士に相談してください。

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