デザインの仕事をしていると、報酬から源泉徴収されます。これは知っていました。

でも私は最近まで、請求額の全部が源泉徴収の対象だと思っていました。デザイン費もディレクション費も、まとめて10.21%が引かれるものだと。

調べてみたら、違いました。

この記事は、制作会社17年→独立し5年目のデザイナーである私が、「実は区分できるらしい」と気づいたところをそのまま書いたものです。同じ勘違いをしている人がいるかもしれないので。

※税務の判断は個別の事情で変わります。この記事は一般的な仕組みの紹介です。実際の処理は国税庁の情報を確認し、税理士やクライアントに相談してください。

デザイナーの報酬は源泉徴収の対象

まず前提から。

源泉徴収の対象になる報酬は所得税法204条1項で決まっていて、第1号に「デザインの報酬」がはっきり入っています。だからデザイナーが法人から報酬を受け取るとき、原則として引かれます。

国税庁が示しているデザインの範囲は、こんな感じです。

  • 工業デザイン(自動車、家具、織物など)
  • クラフトデザイン(雑貨など)
  • グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙など)
  • パッケージデザイン
  • 広告デザイン
  • インテリアデザイン
  • 服飾デザイン

私の仕事の中心はグラフィックデザインなので、ここに真っ向から当てはまります。引かれるのは当然でした。

源泉徴収の仕組みそのものについては個人事業主の源泉徴収とは?にまとめています。

でも「全部」ではなかった

問題はここからです。

対象になるのは「デザインの報酬」であって、請求書に載っている金額の総額ではありません。

一般的に対象外と考えられているのは、たとえばこういうものです。

  • コーディング・プログラミング(国税庁の報酬・料金の区分に定めがない)
  • ディレクション費
  • 環境テストなどの作業

ディレクション費については、税理士がQ&Aサイトで「ディレクション費は源泉徴収の対象外なので、デザイン費部分だけで源泉徴収の計算をする」と回答している例がありました。

つまり請求書に「デザイン費」と「ディレクション費」が並んでいる場合、理屈のうえでは、デザイン費だけが源泉徴収の対象になるということです。

国税庁の通達も「区分せよ」と言っている

もう少し踏み込むと、国税庁の通達にこういう趣旨の記述があります。

デザインとその施工を併せて請け負って対価を一括で支払うような場合、総額をデザインの報酬と施工の対価に区分して、デザインの報酬について源泉徴収を行うべきである。ただしデザインの報酬部分が極めて少額と認められるときは、源泉徴収をしなくても差し支えない。

「区分すべき」と明確に書かれているんですね。

実務でも、Webサイト制作一式のようにデザインと非デザイン業務が混ざる場合は、請求書で明確に区分してデザイン部分のみ源泉徴収するのが一般的とされています。

【実体験】私は区分していませんでした

正直に書きます。私は請求書で区分していません。

デザイン費、ディレクション費、Web制作費。これらをまとめた金額に対して、10.21%を計算して請求書に書いていました。「デザイナーの仕事だから全部対象」と思い込んでいたからです。

実際、法人クライアントからの報酬はWeb制作も含めてすべて引かれています。ただこれは、私が区分していないから、相手も総額に対して処理していたという話でもあります。

考えてみれば当然で、請求書に区分がなければ、相手の経理は全体をデザイン報酬として扱うしかありません。判断材料を渡していなかったのは自分のほうでした。

ちなみに支払調書は、送ってくれる取引先とそうでない取引先があります。だから引かれた額は自分で記録しておかないと、申告のときに困ります。ここは前から自分で管理していました。

損はしていない。でも変わるものはある

ここは誤解のないように書いておきます。

多く引かれていたからといって、損をしていたわけではありません。

源泉徴収は所得税の前払いです。引かれすぎていれば、確定申告で還付されます。1年間で見れば納める税額は同じ

じゃあ何が変わるのか。手元にお金が入るタイミングです。

区分すれば、源泉徴収される額が減ります。その分は入金の時点で手元に残る。1年後に還付されるお金が、先に手元にあるかどうかの違いです。

フリーランスの資金繰りを考えると、この差は小さくありません。入金の波がある働き方だと、なおさらです。

区分するなら、請求書をどう変えるか

理屈のうえでは、こういう形になります。

項目金額源泉徴収
デザイン費100,000円対象
ディレクション費50,000円対象外
消費税(10%)15,000円
小計165,000円
源泉徴収税額△10,210円デザイン費のみ
お支払金額154,790円

デザイン費10万円に対してのみ10.21%を計算するので、源泉徴収税額は10,210円。区分せずに15万円全体で計算した場合(15,315円)と比べると、5,000円ほど手元に残る額が変わります

請求書の書き方全般は個人事業主の請求書の書き方にまとめました。

⚠️ ただし、これを自己判断で始めるのはおすすめしません。理由は2つあります。

①区分の妥当性は実態で決まる

名目上「ディレクション費」と書けば対象外になる、という単純な話ではないはずです。実際の業務内容と契約の実態が伴っている必要があります。

②処理するのは相手

源泉徴収するかどうかを判断するのは支払う側です。こちらが区分して請求しても、相手の経理方針や顧問税理士の見解によって扱いが変わる可能性があります。

私自身、まだ請求書を変えていません。まずは税理士に相談して、そのうえでクライアントに確認するつもりです。ここは急いで変えるより、順序を踏むほうが安全だと考えています。

まとめ

  • デザインの報酬は源泉徴収の対象。グラフィックデザインは明確に対象
  • ただしコーディングやディレクション費は対象外とされている
  • 国税庁の通達も、デザインと非デザインを区分して源泉徴収すべきという趣旨
  • 区分がなければ、相手は総額で処理する。判断材料を渡すのは自分の側
  • 多く引かれても損ではない(確定申告で還付される)。変わるのは手元にお金が入るタイミング
  • 私はまだ区分していない。税理士に相談してから判断する

「デザイナーだから全部引かれる」と思い込んでいたのは、完全に私の勉強不足でした。制度を知らないと、自分で選べたはずの選択肢に気づけません

引かれた額を正確に記録しておくことは、どちらにしても必要です。私は会計ソフトで請求書の発行から記帳までつなげているので、年間の源泉徴収額はすぐ集計できます。支払調書が届かない取引先がある以上、自分の手元に記録があることが結局は一番確実でした。

繰り返しになりますが、区分の可否は個別の事情で変わります。国税庁の情報を確認し、税理士に相談してください。

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