「会計ソフトって、月1,000円くらいの固定費だよな……削れないかな?」 「エクセルや手書きの帳簿でも、確定申告ってできるんじゃないの?」

独立したての頃、固定費はできるだけ削りたいですよね。その気持ち、よく分かります。

結論から言うと、会計ソフトは法律上の義務ではなく、使わなくても確定申告はできます。ただし、青色申告の65万円控除を狙うなら、ソフトなしはまったく現実的ではありません

この記事では、制作会社17年→独立し、マネーフォワードを使って4年目のフリーランスデザイナーの私が、「会計ソフトを使わない」という選択肢を正直に検証します。1年目に帳簿付けをサボって地獄を見た、私のリアルな失敗談つきです。

結論:会計ソフトは義務ではない。でも「65万円控除」を諦めることになる

まず前提の整理です。個人事業主に義務付けられているのは「帳簿を付けて保存すること」であって、「会計ソフトを使うこと」ではありません。手段は自由です。

問題は、青色申告の最大65万円の特別控除を受けるための条件にあります。65万円控除には、ざっくり言うと次が必要です。

  • 複式簿記での記帳(お金の動きを2面から記録する、簿記のルールに沿った帳簿)
  • 貸借対照表・損益計算書の作成
  • e-Taxでの申告(または電子帳簿保存)

この「複式簿記」が曲者で、簿記の知識なしに手作業でやるのはかなりの苦行です。会計ソフトは、この複式簿記を「日々の入力から自動で」やってくれる道具。つまり、ソフトを使わない=複式簿記を自力でやるということです。

会計ソフトを使わない場合の選択肢と限界

「それでも自力でやりたい」という人のために、選択肢を正直に並べます。なお、私自身は独立当初から会計ソフト(マネーフォワード)を使っているので、ここは実体験ではなく、調べたうえでの整理です。

選択肢①:エクセルで帳簿を付ける

無料テンプレートも配布されており、コストはゼロ。ただし——

  • 複式簿記の仕訳を自分で理解して入力する必要がある
  • 銀行口座やカードの明細は手作業で転記(自動連携なし)
  • 貸借対照表・損益計算書も自分で組む
  • 計算式のミスに気づきにくい

簿記の知識がある人なら不可能ではありませんが、「経理が本業ではない個人事業主」には負担が重すぎるというのが正直な感想です。

選択肢②:手書きの帳簿

紙の帳簿でも法律上はOKです。ただしエクセルの大変さに加えて、集計もすべて電卓。転記ミス・計算ミスのリスクを考えると、あえて選ぶ理由は見当たりません。

選択肢③:白色申告(または10万円控除の青色申告)に切り替える

複式簿記を諦めれば、簡易な帳簿(単式簿記)で済みます。白色申告、または青色申告でも10万円控除のコースです。

ただしこれは、65万円控除を捨てるということ。課税所得が仮に300万円なら、所得税・住民税あわせてざっくり年10万円以上の差になることも珍しくありません。月1,000円ちょっとのソフト代を惜しんだ結果、それを大きく上回る税金を余分に払うのは、明らかに本末転倒です。

【実体験】帳簿を「溜めた」だけで地獄を見た話

ここからは私の失敗談です。

実は私、会計ソフト自体は独立1年目から入れていました。それでも地獄を見ています。何をしたかというと、日々の帳簿付けをサボり続けたんです。

「ソフトも入れたし、まあ確定申告前にまとめてやればいいでしょ」——そう思っていた1年目の私に教えてあげたい。確定申告前の私を待っていたのは、1年分のレシートの山でした。財布から、封筒から、机の引き出しから発掘されるレシートたち。結局、整理と入力だけで2〜3日を溶かしました。あの数日間は、デザインの仕事は一切進んでいません。

ここで気づいたことがあります。

「ソフトを使うかどうか」以前に、記帳を溜めたら誰でも死ぬ、ということです。

そして会計ソフトの本当の価値は、この「溜めない仕組み」にあります。口座とクレジットカードを連携しておけば、取引データは自動で取り込まれる。私は週1回マネーフォワードを開いて、自動取り込みされた明細を確認・仕訳するだけ。1回あたり数分です。この習慣で、使って4年目の今も帳簿はまったく溜まっていません。

もしこれをエクセルや手書きでやっていたら? 自動連携がないので、サボった分の明細転記もすべて手作業。1年目の地獄が、確実に倍増していたはずです。

「時間を買う投資」として考える

会計ソフトの費用は、プランにもよりますがだいたい年1万数千円。これを高いと見るかどうかは、「自分の時給」で考えるのがおすすめです。

仮に自分の時給を3,000円とすると、年1万数千円は4〜5時間ぶん。一方、ソフトなしで複式簿記を自力運用した場合に余分にかかる時間は、記帳・転記・集計・書類作成を合わせれば、年4〜5時間ではまったく済みません。私のサボり事件のように、数日単位で溶ける可能性すらあります。

つまり会計ソフト代は、節約の対象ではなく「時間を買う投資」です。浮いた時間で本業を1件でも進めれば、余裕で元が取れます。

私はストックフォトのサブスクにも同じ基準でお金を使っています。道具代をケチって自分の時間を溶かすのは、結局、自分を安売りしているのと同じだからです。

それでも「使わない」が向いている人・向いていない人

とはいえ、全員にソフトが必須だとは言いません。正直に線引きします。

使わなくてもなんとかなるかもしれない人

  • 簿記の知識があり、複式簿記を自力で回せる
  • 取引の件数が極端に少ない(月に数件レベル)
  • 白色申告・10万円控除で構わないと割り切っている

素直に使ったほうがいい人(大多数はこちら)

  • 簿記の知識がない・勉強する時間も惜しい
  • 65万円控除をしっかり取りたい
  • 銀行口座・クレカの取引がそれなりにある
  • 経理より本業に時間を使いたい

私のまわりのフリーランス仲間を見ても、続いている人はほぼ例外なくソフト派です。

まとめ:削るべきはソフト代ではなく「経理に溶かす時間」

個人事業主が会計ソフトを使わない選択肢について、正直に検証しました。

  • 会計ソフトは義務ではないが、65万円控除を狙うなら現実的ではない
  • エクセル・手書きは、複式簿記の自力運用という重い代償がある
  • 記帳を溜めたら誰でも地獄を見る。ソフトの価値は「溜めない仕組み」
  • 年1万数千円は、時給換算すれば確実にペイする「時間を買う投資」

月1,000円ちょっとを削って数日を溶かすより、その時間を本業と家族に使いましょう。

どのソフトを選ぶかは、マネフォ・freee・弥生を実体験ベースで比較した会計ソフト比較の記事でどうぞ。

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